「先生、春休みのどこかで会えませんか?」

昨年春に教室を卒業した2人の生徒が立て続けに連絡をくれた。

こういう連絡が一等嬉しい。

先週は、この春から大学生になる男子生徒と再会した。

彼は小学4年生から高校2年生まで通ってくれていた。

高3になる時に受験に専念したいとのことで卒業した。

4月から遠方の大学に進学にするにあたり、一人暮らしを始める。

家賃や光熱費、食費などの生活費と学費等、必要な金額を4年分、

一括でもらったとのこと。追金はないらしい。

「そのお金を自分で運用しなさい」

とお父さんから言われたそうだ。そうして、お金の勉強を始めたらしい。

面白い。

会わなかったこの1年間のこと、そしてこれからのことなど、

一通り聞かせてくれた。そして、別れ際、こんなことを言ってくれた。

「この教室に通っていて良かったなぁって思う。物事を深く考えられるようになったもの。一番良かったのは、思考を明確に言語化できるようになったこと。話すにしても書くにしても、適切に瞬時に、言語化できるようになったのは、あのディスカッションと作文の授業のおかげ。それと、先生は、俺がどんなに変なことを言っても、いつも一切、否定することなく、受け止めてくれるよね。そして、その上で自分の考えを伝えてくれる。だから、こうして話したくなるんだよね。大学に行って落ち着いたら、俺、また先生のレッスン受けたい」

嬉しいことを言ってくれるではありませんか。



今週は、この春、大学2年生になる女子生徒と再会。

彼女は小学3年生から高校3年生まで通ってくれていた。

遠方の大学なので、昨年春から一人暮らしをしている。

コロナで入学式もなく、初めての大学生活はオンライン授業から始まった。

初めての一人暮らしに加え、コロナで友達を作る機会も無かったので、

不安もあったそうだが、今は友達も増え、学生生活を満喫しているとのこと。

新聞社で校閲のアルバイトをしているそうだ。

教室で書き続けた作文が活きている。彼女は10年書き続けてきた。

一つのことを10年継続すれば、プロになれると私は思っている。

親御さんからの仕送りもあるが、なるべくバイト代で生活費を賄うようにし、

バイト代が多く入った月は翌月の仕送りを断っているとのこと。立派!

教室を始めて丸っと12年が経った。これまでに多くの生徒と出会ってきたが、

彼女程、軸をしっかり持った生徒にお目にかかったことがない。

高校進学の際、成績だけで見れば、県内有数の進学校という選択になったと

思う。しかし、彼女は家から一番近い高校を選んだ。理由もしっかりあった。

物事を自分の頭でよく考え、選択し、行動に移している。

そして何より、親御さんのスタンスがいいなぁと思う。

一切の口出しをせず、彼女の選択をいつも信じて、見守り続けている。

これは先に書いた男子生徒の親御さんにも通じる。

この2人の生徒の親御さんは子どもの進路に一切の介入をしない。

「本人に任せているので」といつも言っていたのを思い出す。

「放任」ではないので誤解なく。心から信じているのが伝わってきていた。

彼女は小3から高3まで一日も休むことなく教室に通ってくれた。1日もだ。

同じく書道教室も高3まで休まず続けたそうだ。

一般的には、受験が近づくと習い事をやめる人が多い。

なぜそうしなかったのかを聞かせてくれた。

「一度始めたことは最後までやり遂げたい、中途半端にしたくないという気持ちが強いんですよね。それに、学校ではあんなに長い作文は書かないので、この教室で書けるようになったことが嬉しくて、もっと書きたいと思うようになったし、書くことが楽しかったんです。それと、先生が面白いじゃないですか(笑)教室に来ると先生に会えるから、それが楽しみというのも大きかったですよ」

私は芸人か(笑)

彼女は決して努力を怠らず、結果をきちんと出している。

「進学先はあまり関係ないと思うんです。要は、『やるか、やらないか』です」

私が会社の社長なら、絶対的に彼女のような人が欲しい。



私はこの教室で、このような人たちを育てているのだなぁ。

図らずも教室の方向性を改めて確認する機会となった。