昨日のことを振り返るとちょっぴり切なくなる。
「自分を解放してるの」
なかなか筆が進まない彼女にお小言を並べた後、彼女はそう言った。
「学校や塾ではちゃんとしてるよ」
彼女の友人のFちゃんが彼女を弁護した。
最近の小学生の子たちは息つく暇もないほど忙しい。
どこかで自分を解放しないと心のバランスを保てなくなる。
先日、入会を検討されている方が面談に来てくださってこのようなことをおっしゃった。
「この教室に通われている方からの紹介で来ました。
お子さんがのびのびしていると伺いました。
うちの子は一度も宿題をサボったことがなく、全て完璧にしようとするんです。
おかしな言い方かもしれませんが、少しサボることを覚えてほしくて。
成績とか点数とかそういうことではなくて、
思ったこと、感じたことをのびのび表現できるようになるといいなと思いまして。
家でも学校でも塾でもない新たな自分を発見する居場所というのか、
そんな場所が子どもにあるといいと思うんです」
何かいいなと思った。私自身も子どもの頃、いつもどこか緊張していて、
自分を解放する場所があったかどうかは思い出せないが、
部屋で一人になったとき、変顔をすることで自身を解放していたような気がする。
14年前、会社員を辞めて立ち上げたこの教室。
毎日、子どもたちと過ごすことで私自身もどんどん自分を解放していった。
この教室で、子どもたちだけでなく、私も解放しているのだと思う。
お互いさまだったのだ。
いつも教室に入って来るときの彼女の顔を思い出す。
少しドアを開けて顔を覗かせてから、
にまーっと笑って「こんにちはぁぁぁ」と言って入ってくる。
そこには緊張から解き放たれた安心しきった顔が確かにあった。
来週も彼女がそうやって来られるよう、私もにまーっと出迎えよう。
教室は今月で14年目を迎えた。
そういえば、立ち上げた頃から一貫して言われていることがある。
「ここは自分を解放する場所なの」
今も昔も子どもたちの口から出てくる言葉は変わらない。
立ち上げたときの想いを胸にこれからもコツコツ続けていこうと思う。
そして、教室を私を信じてついてきてくださっている保護者の方、子どもたちに心から感謝したい。