何かを本気で身に着けるには10年かかると思っている。

この教室を始めて13年になる。

例えば作文の添削をするにあたって、

ざっと目を通したときに「ここをこうすると、こうなる」という指導方針が瞬時にわかるようになったのは、10年経った頃からだったと記憶している。

それまでは「あぁでもない、こうでもない」と思い悩みながら頭でいろいろ考えて言語化していたと思う。

今は体感レベルでというのか、条件反射的にというのか、パッと言語化できる。

楽しくなってきたのも10年を超えたあたりからで、それまでは「楽しい」を感じている心の余裕はなかったように思う。




10年間、休むことなく通い続けてくれた大学生の生徒が新聞社で校閲のアルバイトをしている。

寡黙な彼女の10年はコツコツ10年だった。

作文を書くのだから、毎週やる気に満ち溢れていたわけではなかっただろう。

気が向かない日や乗らない日もあったと思う。

それでもコツコツ通い、そうして彼女はプロになっていった。

彼女は「教室に通うのは楽しかったです」と言ってくれたが、振り返ったからそう思えるのであって、渦中にいるときは、「楽しい」ばかりではなかったはずである。でも、コツコツ続けたからこそ味わえる胸中なのだと思う。



本当の楽しいはいろいろを乗り越えた先にある。